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日语文学作品赏析:《島木赤彦臨終記》

2014-08-11 21:07:28来源:沪江日语

  四

  三月二十三日午前、皆して二たび□蔭しいん山房に行つた。ゆうべ、百穂画伯の『丹鶴青瀾図たんかくせいらんづ』の写真を赤彦君が見たときのことを森山汀川君が話して呉れた。赤彦君は努力して両手を張つてそれを見た。そして、『これはたいしたものらしい』と云つた。それから、『どうも写生に徹したものだ』とも云つたさうである。そこで、けふも赤彦君の枕頭ちんとうでその絵の話などをし、時に諧謔かいぎやく談笑した。午餐ごさんには諏訪湖の鯉こひと蜆しじみとを馳走になつた。これは、『どうも何もなくていけないが、鯉と蜆でも食べて行つてくれたまへ』といふ赤彦君の心尽こころづくしであつた。静かに籠こもつてゐたい赤彦君の病牀びやうしやうを邪魔したのさへ心苦しい。然しかるに赤彦君は苦しいうちにかういふ心尽しをされるのであつた。僕等は忝かたじけなく馳走になつた。

  午後三時に伴さんが見えて、注射を二とほりされた。僕もそのとき同坐した。注射の一つは強心の方の薬で、一つは神経痛のための薬であつた。この注射は赤彦君から進んで所望されるので、今朝から催促されてゐたものである。それから一時間ばかり経つて僕等は二たび病牀を見舞つた。その時には赤彦君は珍らしく機嫌好よくていろいろの話をした。これは強心の方の薬にコフエンが入つてゐるので、それが神経に働いたためであらうか。角館かくのだて中学校の校歌の話になつたとき、『つまり茶話ちやわ会などの時に歌ふのもあつていいですね。何とか謂いつた。佐竹義敦さたけよしあつ、小田野直武をだのなほたけは日本洋画の紅こう二点、といつた調子ですね。デカンシヨ式でも好し。男をとこ美術に女をんなの美術、美術美術で苦労する、と云つた調子ですね』『天てんにそびゆる秋田の杉も巌いはを貫く根元ねもとから。それから、行つて見たかや田沢たざはの湖うみへ、そこの浮木うきぎの下のみづ。かういふのは幾らでも出ます。校歌の方は一遍妻さいに書かせてみます』こんなことを赤彦君は俯伏うつぶしながら云つたので、皆が愁眉しうびを開いて喜んだのであつた。けれども赤彦君は、このごろ眠りと醒覚せいかくとの界さかひで時々錯覚することがあつた。ゆうべあたりも、『おれの膝ひざに今誰か乗つてゐなかつたか』などと問うたさうであつた。

  そこで、赤彦君は皆みんなに茶を饗することを命じた。その間に赤彦君は冷水を音させながら飲干のみほして、『実に旨うまい。これが一等です』などとも云つた。僕は、この分ならば赤彦君の寿命は三月一ぱいは保つであらう。そして短歌の方の製作も幾つか出来るだらうと思つて、秘ひそかに喜んだのであつた。そして、四月の四日過ぎには少し暇になるであらうから、その時また出直して来て邪魔するなどとも云つた。けれども僕の眼識は欲目のために鈍つてゐて、赤彦君は三月尽さんぐわつじんを待たずに歿ぼつし、短歌の製作も『犬の歌』以後は絶えたのであつた。

  僕等は赤彦君のまへに偽いつはりを言ひ、心に暗愁の蟠わだかまりを持つて□蔭しいん山房を辞した。旅舎やどに著いて、夕餐ゆふさんを食し、そして一先づ銘々帰家きかすることに極きめた。それまで湯に入るものは湯に入り、将棋を差すものは将棋を差した。心が妙に興奮してゐて、思はぬ所ではしやいだりしたのであつた。


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